【安全なM&A】個人買い手の3つのリスク|回避のポイントも解説
更新日:5月29日
M&Aはビジネスパーソンの可能性を広げる選択肢です。昨今はM&Aプラットフォームも発達しており、本業を続けながら案件を探すことができます。
そして、M&Aに成功すると、すでに売上や利益がある状態の会社もしくは事業を取得し、独立や起業につなげることができます。一方で、M&Aにはリスクも存在することを知っておかなければなりません。リスクを理解せず、M&Aを実行すると、失敗に終わる可能性が非常に高いためです。
100%安心・安全なM&Aはありませんが、出来る限り細部にわたりリスクヘッジ・リスクコントロールを行うことにより、取得後のトラブルを回避できます。
本記事では、買い手側に起こり得る3つのリスクと、それらのリスクを回避するための方法を分かりやすく解説します。これからM&Aをご検討される個人の買い手の皆様は、ぜひ本記事の内容を、参考にしてみてください。
M&Aを活用して、独立・起業・副業を実現
個人の買い手がM&Aを行うと、すでに売上や利益がある状態の会社もしくは事業を取得し、独立や起業につなげることができます。また、管理の手間がかからない案件を取得できれば、副業としてのキャッシュフローを構築できます。
M&Aの成功にはリスクに関する知識や理解も重要になる
買い手側がM&Aを行うことには、もちろんメリットばかりが存在するわけではありません。そもそもM&Aを成功させるまでのプロセスには多くの時間を要します。また、そのプロセスは容易ではなく、専門的な知見が求められます。
買い手側は、売り手に自身の魅力を訴求しつつ、リスクをコントロールしながらM&Aを進めなければなりません。M&Aを成功させるためには、こうしたリスクコントロールをきちんと行った上で、状況に合わせて適切な行動を取る必要があるのです。
特に、M&Aを検討されている個人の買い手の方は、リスクに関する知識を蓄え、きちんと理解することが重要です。
M&Aにおける買い手側の3つのリスク
個人の買い手は、M&Aの後も対象企業の従業員とともに、目的に向けた経営を進めていく必要があります。M&Aのリスクには、取引中の交渉の他、統合後のプロセスも含まれています。
買収後のプロセスにより、M&Aの実行が成功だったのか、それとも失敗だったのかが明確に分かれる場合もあります。M&Aで買い手側に生じるリスクには、後になって大きな損失を生むものもあります。
具体的にそのリスクには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、M&Aで個人の買い手側に起こり得るリスクについて説明します。M&Aにおける、個人の買い手側の主なリスクは、以下の3つです。
簿外債務の引き継ぎに関するリスク
買収企業が締結していた契約に関するリスク
統合後に関するリスク
上記3つのリスクは、どれも買い手側がM&Aを成功させるために回避すべきものです。これら3つのリスクに関して、以下にて詳しく説明します。
簿外債務の引き継ぎに関するリスク
簿外債務を引き継ぐリスクとは、帳簿に記載されていない債務を引き継ぐリスクのことをいいます。
例えば、未払いの給与や退職金などがこれに該当します。簿外債務のように財務諸表に記載されない債務を見落としてしまうと、M&A後に大きな損失を生むことにつながります。また、契約内容によっては、その損失を買い手が被らなければならないケースもあります。
簿外債務は、法人の買い手も綿密に確認する事項です。個人の買い手として行う小規模のM&Aであっても、簿外債務に関する確認は非常に重要です。
対象企業が締結していた契約に関するリスク
対象企業が締結していた契約とは、M&Aの前に売り手の企業が結んでいた契約に関するリスクのことをいいます。売り手の企業が結んでいた契約内容次第では、M&A後の事業継続に大きな障害がうまれる場合があります。
例えば、売り手の企業が他社の債務を保証する内容の契約を締結していた場合、M&Aの後に保証債務の履行を求められることがあります。これは当然ながら、M&A後に対象企業を所有している買い手の損失につながります。
また、売り手の企業が取引先との間で、「M&Aが行われた場合、取引を解消する」旨の契約を締結している場合もあります。このような場合であっても、必ずしもM&Aによって契約が解消されるわけではありませんが、取引先がビジネスにとって重要な企業である場合、注意が必要です。
このようにM&Aにおいては、売り手企業がこれまでに締結してきた契約の中にリスクが潜んでいる場合があります。
統合後に関するリスク
統合後のリスクとは、異なる体質を持つ企業同士が統合した後に生じるリスクのことです。株式や事業の譲渡自体がスムーズに進んだとしても、その後の事業がスムーズに進むかどうかはわかりません。
M&A後、文化が異なる企業が1つになると、情報の共有や労働環境・チームワークやコミュニケーションなどのさまざまな面において亀裂や衝突が起こる可能性があります。こうした亀裂や衝突は従業員同士だけのものではなく、時に経営陣に向けられる場合もあります。
また、適切なシナジー効果が得られないことや、ミスから生じる損害賠償などの可能性まで考慮する必要もあるでしょう。こうした状況が長期的に改善されなければ、優秀な人材が企業を離れてしまいます。
M&Aは、従業員同士の関係だけに留まらず、経営陣同士の関係でさえリスクになり得るというわけです。そのため統合後の環境についても綿密に計画を立ててM&Aに臨みましょう。
M&Aにおける買い手側のリスクヘッジ方法
ここまで、M&Aにおける買い手側のリスクに関する説明を行いました。M&Aはビジネスパーソンにとって価値のある選択肢であり、成功したときのリターンは大きいですが、その分、リスクもあります。
重要なのは、リスクをいかにコントロールするかです。事業を営む以上、リスクをゼロにすることはできません。そのため、M&Aのプロセスの中で適切なリスクコントロールを行うことが求められます。
以下では、個人の買い手に求められるリスクヘッジの主な方法を紹介します。ただし、以下で紹介するリスクヘッジ方法が全てのM&Aのリスクをゼロにするわけではありません。M&Aには、1つとして同じものがないため、個別具体的なM&Aごとに必要なリスクヘッジ方法には幅があることをイメージしていただけると嬉しいです。
M&Aの各プロセスにおける確認事項を把握
M&Aには体系化されたプロセスがあります。そして、各プロセスごとに売り手に確認すべき事項があります。そのため、M&Aの各プロセスにおける目的を理解することはリスクヘッジにつながります。各プロセスで何を確認し、どのような状態で次のプロセスに進むべきかイメージできるようになりましょう。
例えば、売り手から対象企業の財務諸表を入手したタイミングでは、BS(貸借対照表)、PL(損益計算書)、販売費・一般管理費内訳書を確認して、数字面から対象企業のリスクを確認します。赤字が続いていたり、資金繰りに不安がある状態であれば、その後の交渉をより慎重に行う必要があるでしょう。
また、売り手のオーナー社長と両者面談を行う場合は、対象企業の雰囲気やカルチャー、従業員の個性や特性のように数字には表れない要素を確認できます。例えば、これまでにノルマのない環境で働いてきた従業員に対して、M&A後に厳しいノルマを課すと、離職につながる恐れがあります。
このように、M&Aの各プロセスは対象会社のリスクを見抜くために活用できます。
デューデリジェンスと最終契約
M&Aにおけるリスクをコントロールするために非常に重要なのが、デューデリジェンスと最終契約です。個人M&Aの場合、案件の検討は買い手1人で行わなければならない場合も多いでしょう。特に、初めてM&Aに望む場合、対象案件を確認するポイントを網羅的にイメージできていない場合もあります。
そうした場合に、専門家の目で案件を確認するデューデリジェンスのプロセスは重要です。個人M&A向けのデューデリジェンスには数十万円から利用可能なものもあります。数十万円の出費で将来のリスクを回避できる可能性が高まることには意義があるはずです。
また、デューデリジェンスで発見したリスクをコントロールするのは最終契約です。繰り返しになりますが、ビジネスにおけるリスクをゼロにすることはできません。そのため、一定以上のリスクは最終契約を活用して、買い手側のリスクとならないようにコントロールするのです。例えば、最終契約で「簿外債務に関連する支払いを売り手のオーナー社長が負担する」旨の条項を定めます。
最終契約のひな形はインターネットから手に入れることもできますが、案件に応じて条項をアレンジしなければなりません。そのため、買い手1人で最終契約を作成せず、弁護士などの専門家のレビューを入れるようにしましょう。
このように、デューデリジェンスと最終契約を組み合わせ、必要に応じて専門家の確認も入れながらリスクをコントロールしていきましょう。
元オーナー社長に引き継ぎを依頼
元オーナー社長に十分な引き継ぎを依頼することもリスクコントロールにつながります。個人M&Aの失敗の中には、取得後に対象会社のビジネスや組織が崩れたために起こるものがあります。顧客、取引先、従業員が離れていくと、これまでのビジネスを維持できなくなります。
会社のステークホルダーにとってM&Aは決して小さな出来事ではありません。突然の社長交代を告げられた顧客、取引先、従業員には一定の戸惑いが発生します。これらの事態を回避するために、元オーナー社長にしっかりと引き継ぎを依頼しましょう。そして、引き継ぎ期間の中で、新しい経営者として紹介してもらい、ステークホルダーとの信頼を形成し、最終的には、元オーナー社長が会社を離れられる状況を作ります。
仮にM&A後に対象企業の制度や体制を変える場合であっても、元オーナー社長が間に入ってくれると成功の可能性が高くなります。このように、M&A後の経営を円滑に行うためには、可能な限り元オーナー社長の協力を得ていきましょう。
個人の買い手を支援する専門家の活用
M&A仲介会社の多くは個人の買い手に対する支援を行っておりません。しかし、昨今は、個人の買い手を支援する専門家も登場してきています。
M&Aのプロセスに不安がある場合は、個人の買い手を支援する専門家に早いタイミングで相談し、各工程におけるリスクコントロールについてアドバイスを得るのがおすすめです。専門家であれば、個別具体的な案件に合ったアドバイスをしてくれるでしょう。
M&Aに行き詰まってから専門家を頼るのではなく、M&Aを計画している段階で専門家に一度相談すると良いでしょう。
まとめ
今回は、M&Aで個人の買い手側に起こり得る3つのリスクと、それらを回避するためのリスクヘッジ法について解説しました。
個人の買い手にとって魅力的なM&Aですが、実際にM&Aを実行する際には、具体的なリスクとリスクヘッジ法をしっかりと理解しておきましょう。具体的なリスクをイメージできている場合、取得後にトラブルが発生する可能性を低くすることができます。
記事の中でも述べた通り、M&Aのプロセスは体系化されており、各プロセスごとに売り手に確認すべき事項があります。また、リスクコントロールにおいて、デューデリジェンスと最終契約は非常に重要です。
元オーナー社長に依頼する引き継ぎの内容および期間も含めて、求められるリスクヘッジ方法は個別具体的な案件ごとに異なります。そのため、早いタイミングでM&Aの専門家に相談し、リスクコントロールの方法についても見通しを立てた上でM&Aを進めると良いでしょう。
「個人M&Aなら、M&Acompass」
M&Acompassは、個人M&Aの買い手に対する伴走支援です。これまでM&Aの専門家のサポートが十分に届いていなかった個人の買い手向けの伴走支援であり、個人M&Aの成約を目指すためのM&A戦略立案・案件探しといった初期的な工程からクロージングまでを支援するサービスです。
「M&Acompass」では、毎週さまざまなテーマでセミナーを開催しています。
また、伴走支援の一部を体験していただく趣旨で、オンライン無料体験会も開催しています。個人M&Aに関する疑問や課題に対して、現役のM&Aコンサルタントが提案・アドバイスさせていただきます。オンライン無料体験会もお気軽にご活用ください!